こんにちは、獣医師の林です。
先日は、『腎』のお話を少しさせていただきました。
東洋医学でいう『腎』と西洋医学でいう『腎臓』は少しニュアンスが変わってしまうのですが、冬は冷えからくる飲水量の低下から腎臓に負担がかかってしまうケースは多く、西洋医学的にも、冬は腎臓のケアを行っていくべきだと考えています。
皆さんご存じの方も多いと思いますが、ワンちゃんの場合には体重×50~70ml程度、猫ちゃんの場合には体重×50ml程度が1日の飲水量の目安と言われています。
ただ、これはあくまでも目安量になり、運動量やその日の気温、湿度、お体の脱水状態やむくみの状態、フードの種類(ウェット、エアドライ、ドライなど)でも変わりますので、日々の我が子の飲水量目安を調べておくことをお勧めいたします。
そして、飲んだお水がしっかりと体を巡って、おしっことして出すということも重要です。
腎臓や排尿神経が出ている下半身を冷やしてしまうと、おしっこも作られにくく、お体のむくみにもつながってしまいますので、下半身を冷やさないような工夫も取り入れてあげてくださいね。
ただ、いくら気を付けていても、腎臓病を患ってしまう子もいらっしゃいます。
腎臓疾患になると食べるものにも制限が加わりますので、QOLも下がりがち。
特に腎臓疾患用の療法食は美味しくない!!笑
というのも、腎臓疾患用の療法食はタンパク質が制限されている=肉魚の旨味が減る⇒美味しくない⇒嗜好性↓なのです。
私は基本的にどのフードも味見をするのですが、腎臓疾患用は本当に美味しくなかったですし、飼い主様からも『腎臓用のフードを食べてくれなくて困っている』というご相談も多くいただきます。
嗜好性の点でいうと、ドライよりはウェットのほうが嗜好性が高く、腎臓病で問題となる水分摂取量を増やすという点でも、ドライよりもウェットのほうが使いやすいのでお勧めです。
ただ、コスパでいうとドライのほうが良いため、ドライとウェットのダブル使いをすると良いと思います。
そして、病院で取り扱っている会社さん以外にも、療法食を出している会社さんはありますので、フードの会社さんを変更するのも1つの方法です。
それぞれの会社さんで使っている原材料が違うので、もちろん嗜好性も色々。
我が子が喜んで食べてくれるお食事でケアを行っていきたいですよね。
先月、yum yum yum!から慢性腎臓病用の食事療法食「yum yum yum! 健康マネジメント腎臓」が発売されました。
総合栄養食として販売されているyum yum yum!シリーズは嗜好性も高く、すでにご愛用されている方もいらっしゃるかと思います。
素材にもこだわって作られていますので、今回発売となった腎臓用療法食も、腎臓疾患で食事に悩まれている方の救世主になるかもしれません。
ただし、療法食というのは通常のお食事ではなく、お薬のようなものになりますので、獣医師に申告なく変更をしてしまうことは禁物です。
食べているもので体は出来上がっていくため、処方したフードではないものに切り替えたことで、獣医師側が予想していない血液検査の結果が出てしまい、その謎を解くためにさらに検査をしなければならないといったことにもなりかねません。
療法食の会社さんを変更する際には、かかりつけの先生にもご相談・報告をお願いいたします。
また、自己判断で腎臓病療法食を取り入れるのも危険です。
これは腎臓病療法食だけでなく、すべての療法食に言えることですが、療法食とはあくまでも『その疾患を患っている子に対しての栄養バランス』に設計されていますので、何も問題がない健康な子に対しての栄養バランスではないため、自己判断で取り入れてしまうことが健康を害することにもつながってしまいます。
療法食を取り入れる段階か否かについては、かかりつけの獣医師と相談してから摂り入れるようにしてください。
この記事を書いた人
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獣医師
林美彩 先生